1.社宅とは
社宅とは、企業が従業員に対して市場相場よりも安く貸与している住宅を指します。 ファミリー向けの住宅を社宅、単身向けの住宅を寮と使い分けることもありますが、どちらも企業が従業員の住環境を提供しているという意味で、役割は一緒です。
社宅は福利厚生の一環で、求人に社宅・寮の掲載があるケースも多いです。
2.社宅の目的
企業が社宅を導入している主目的は、福利厚生と転勤対応です。 地方から従業員が来るケースや転勤が必要となる従業員は、社宅があると安心して働くことが可能です。
また、社宅は個別に住居を借りるよりも安価に住むことが可能なため、企業満足度向上につながり、離職率低下につながると考えられています。
3.社宅と寮の違い
家族を持つ従業員向けの物件を「社宅」
単身向けの物件を「寮」
と区別することがありますが、日本では言い方の区別をせず、「企業が従業員のために用意した住宅」をまとめて社宅と呼ぶことが多いようです。
寮は、門限設定があったり、部屋にキッチンがなく食堂だったり、風呂・トイレが共用だったりすることが多いイメージです。
4.社宅の特徴
社宅は大きく分けると2種類の形態があります。
企業が所有する社宅
まずは「企業が所有権を持っている社宅」。 この場合、まとまった戸数を作ることが多く、建物は同一企業に勤務する従業員が占めることが多いです。
土地・建物の購入、建設に多くの資金がかかり、大企業が保有することが多いです。 課題としては、維持費・管理費が企業負担となることと、老朽化に伴う修繕・補修、最終的には建て替えなどが必要となる点です。
借り上げ社宅
2点目は「企業が一般住宅を借り上げる社宅」。 一般的に借り上げ社宅と呼ばれています。
初期投資が不要で、時期・戸数など、その時に必要な物件を選択できることがメリットと言えます。
企業が所有する社宅と異なり、建物の修繕・維持・管理、老朽化への対策などを行う必要がなく負担が少ない点もメリットの一つですが、部屋の解約時は1件ごとに行う必要があり、その都度企業の手間が発生してしまいます。
5.社宅のメリットとは
企業側のメリット
コストカットなど
企業が負担した家賃は金額を損金算入が可能です。 また、従業員への給与支払額が減らせる点もメリットになります。 加えて、従業員からの家賃徴収による収益が得られる点もメリットの一つです。
企業イメージの向上
求人を行う際、福利厚生が充実している点を強くアピールできまる。 社宅は遠方から転居を伴い入社する従業員にとっては非常に魅力であり、企業イメージも向上します。
従業員の負担軽減
通常、住居を借りる場合には、物件探しから仲介業者との契約といった手続きを自分自身で行います。 しかし、社宅に住む従業員は、転居による手間、支払う税金の負担も軽減され、最終的には従業員満足度の向上も見込めます。
従業員のメリット
手続きの手間が減る
企業が社宅を保有している場合、従業員は転勤時に住居を借りるための契約・手続きが不要となるため、負担が軽減されます。
通常、住居を借りるためには物件探し・不動産業者との契約・手続きなどを自身で行わなくてはならないのですが、社宅間の移動の場合、従業員にとっては大きなメリットとなります。
コスト削減
社宅は通常の賃貸物件に比べて安い賃料で使用できます。 また敷金・礼金などの初期費用や賃貸契約の更新料なども発生しないため、賃貸にかかるさまざまなコストが削減できます。
加えて給与から社宅利用分の家賃が引かれるため、所得額は減り、節税にもつながります。
6.社宅のデメリット・問題点
企業側のデメリット・問題点
物件の管理
1点目は物件の管理です。 借り上げ社宅であれば問題になりませんが、所有物件の場合は維持費・管理費が企業負担となったり、老朽化対策に向けた補修や建て替えなどを行ったりする必要も発生します。
一定の家賃がかかる
転勤・退職といった理由により従業員が物件から退去した後、すぐにほかの従業員が入居するとは限りません。 そのため時期によっては空室の期間が発生します。
借り上げ社宅の場合、借りている物件が空室になったとしても家賃は発生するため、無駄なコストが発生してしまいます。
従業員側のデメリット・問題点・課題
好みの物件とは限らない
社宅は企業があらかじめ用意している物件のため、従業員自身の好みに合うとは限りません。 自由に選択できないという点では従業員側のデメリットになります。
また、企業が所有する物件では、建物に同じ企業の従業員が何人も住むという状況も珍しくありません。 そのため、職場とプライベートを区別しにくくなるケースも考えられます。
社会保障額
一般的に社宅の家賃は従業員の給与から引かれるため、節税につながるとされています。 しかし、一方で所得額が減るため、社会保障額も減る可能性が生じると考えられています。
節税対策の観点では企業による家賃補助の支給、キャッシュフローの観点では家賃の一部を従業員の給与から天引きすることが理想的でしょう。
7.社宅と家賃・課税
賃貸料相当額
国税庁は、企業が社宅を従業員に貸す場合に、一定額の家賃以上を受け取っていれば給与として課税しないと規定しています。
この「一定額の家賃」は賃貸料相当額とも呼ばれており、下記3つの合計額とされています。
(その年度の建物の固定資産税の課税標準額)×0.2%
12円×(その建物の総床面積(平方メートル)/3.3(平方メートル))
(その年度の敷地の固定資産税の課税標準額)×0.22%
給与として課税される場合
企業が従業員に社宅を無償で貸与する場合、上記の賃貸料相当額が給与として課税されることと定められています。 従業員から賃貸料相当額より低い家賃を企業が受け取る場合には、受け取っている家賃と賃貸料相当額との差額が、給与として課税されます。
一方で従業員から受け取る家賃が賃貸料相当額の50%以上である場合には、受け取る家賃と賃貸料相当額との差額は、給与として課税されません。
一定額の家賃以上「課税されない」場合
上記にあるような一定額の家賃以上でなくても「課税されない」というケースがあります。
たとえば医師や看護師、守衛などといった職務では、勤務地から離れた場所に住むことは事実上難しいと考えられるため、雇用主が社宅を従業員に無償で貸与しても給与として課税されません。
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